2010年6月3日木曜日

デザインイノベーション論:リチャードサッパー

前々回のことになるのですが、特別講義でサッパーについて習ったので、内容をまとめたいと思います。

この回も午前中はインターンに出ていたので、最初の10分くらい聞き逃してしまいました。
入っていった時にちょうどこの電話の話を先生がしている最中でした。この電話は家庭用の固定電話なのですが、携帯電話のように折りたたみ式になっていて、持ち上げるとパカッとひらくようになっています。その電話の開き方がかわいくて。先生は小鳥みたい、と言っていました。内側のダイヤルが黒いのもコントラストが効いていてとてもモダン。数字とダイヤルが分かれているのもごちゃっとせずにキレイだと思いました。

その後の内容はサッパーの作品の解説と彼自身について、またアイデンティティーなどについてでした。

1.ラジオ
あけると操作部分とスピーカーがついている。見た目はシンプルでモダンだけれど、造形にはこだわりがあり、細部が複雑である。
内側にアールがついていて操作に誘い込むようになっている。

2.次にこのテレビ

シンプルで黒いスクエア。究極のデザイン。シンプルだけど、人間はただのシンプルだとつまらないのでボタンの配置やダイヤルなどでディティールにこだわっている。1つずつのデザインの要素に興味がわくようなデザインにすることが重要。

この飽きのこない、つまらなくならない、というのにはポイントがあるそうです。それは彫刻のようなデザインにすること。
彫刻の面白いところは、見る角度によって形が変わるところ。いろんな角度から見られる、ということを考えてデザインすることが大切だそうです。そうすれば興味のわく造形になるそうです。

さらに先生はサッパーから学んだことをいくつか話してくださいました。例えば、IF賞の取り方。IF賞は、全体の造形の確かさ+細かいところのディティールのこだわりのある作品に送られるそうです。

この前の特別講義のときにきてくださった廣村さんも「仕上げをキレイにするのも才能」と言っていたのですが、ディティール、って重要なんだなと改めて確認。

3.スピーカー

これも究極のデザイン。こんな風にシンプルなものを作られるともうこれ以上のものは作れないそうです。

4.IBMのビル
非常階段がとてもシンボリックなビル。普通なら裏に隠すような非常階段をわざと表に出しているそうです。この階段が見る角度によって形が変化するのが興味の湧くところなのだそうです。
また階段が45度の繰り返しなのも、福田繁雄のグラフィックのように興味をそそるのではないか、という事だそうです。

5.時計

これはサッパーのデビュー作だそうです。弾薬を作っていた中小企業が戦争終わっていらなくなった弾薬をうまく利用できないか、と言っているところにサッパーが名乗り出て作ったものだそうです。イタリアにあるリナシャンテというデパートに出したものだそうです。

最近この時計は復刻したそうで、どんどん手に入りやすくなっているそうです、それは型版はもうあるので新しく作る必要がないことが理由だそうです。サッパーはドイツ生まれで、イタリアでデザインをしていたのだそうですが、イタリアはデザイン料がないそうです。なので売り上げの何%かもらうのだそうです。ずっと良いものは売れ続け、ライセンス料をもらい続けることが出来るので、デザイナーはずっと売れるデザインをするのだそうです。

6.ラジオ

金属と革の材質をうまく使ったデザイン。上部のへこみがストラップの留め具に続いているのが連続性を生み、人に興味を与えるのだそうです。更にしっかり止められている感じも醸し出せるそうです。

7.目覚まし時計

そしてこれもまた究極のデザイン。
スケッチから生まれたのではなく、数学的な形。これをこえることは難しいそうです。

究極の形とは最も使いやすく、もっとも美しいのだそうです。
サッパーは同じものを2度とデザインしないそうです。1回目で1番きれいなものを作るのだそうです。生活全般のものを作っているので、すごいのはロンドンのデザインミュージアムでどこのコーナーに行っても彼の作品があるそうです。彼の作品はちょっと現代風にブラッシュアップされながら作り続けられているそうです。

この目覚まし時計は先生は最初普通じゃん、と思ったそうです。音楽と一緒でいいものはだんだん味わい深くなってくるのかなあ、と思いました。
その逆で、とっつきがいいもの、ってすぐ飽きちゃうのかなあ、と。味わい深い、ってやっぱディティールから生まれるのかなあ、なんて。

8.照明

これは画像がないんですが、研究室にもある、手元の本を読むための照明です。微弱電流がスタンドのところに通っていて、ケーブルがないのだそうです。手元を照らすために角度を調節できるのですが、照明の曲げるところ、間接にあたる部分が角の取れた形になっていておもりのように、降ることを促した形になっているそうです。

9.タイマー

上部に細かい時間、側面にだいたいの時間が表示されていて、すきまでつながっていることでマクロとミクロを結びつけているそうです。そのマクロとミクロの部分に彼のデザインの全神経が注がれているそうです。なるほど。
また、人の目は平らなものってへこんで見えちゃうそうです。なのでこのタイマーは表面が少しポコッと丸く出てるのだそうです。

10.ヤカン

これはニワトリのメタファーが用いられているそうです。メタファーが強すぎるとトゥーマッチになってしまうので、いかに押さえるか、というのがポイントだそうです。
サッパーはあきないデザインを目指していて、無駄な部分をのぞき、もともと必要な部分で興味の湧くようにしているそうです。

この間、イタリアに行った時、サッパーにお会いしました!
体格が良くてがっちりした方でした。グラスにお水を注いだときの笑顔が忘れられません。
おじいちゃんを思い出しました。

頑張ってなけなしの英語力を振り絞って質問したら、よく考えて答えてくれました。

デザインには何が一番重要なのか聞いたら、彼は感情に訴えかける形が重要だ、と言っていました。形を考えるのはとても苦手なので忘れないようにしたいです。

最近、横溝先生の授業で、デザ科の問題点を挙げる、というグループワークをしているのですが、話合っていると、自分の問題点を挙げていっているようなものなので苦しいです(笑)
最近思ったのは、もっと楽な気持ちでデザインできないのかな、という事です。

3年とかの時はもっと無邪気に無謀なこと考えてたよなあ、と。もっと楽しくできたらもっと良くなるんじゃないかなあ、と思いました。(みんなもう出来てるのかもしれないけど)

100%オレンジのブログに前、カフェでアイディア出ししてるつまんない人がいた、みたいに書いてあって、ドキッとしてしまいました。どっちかっていうとうちもそんなタイプなので。

けっこうその時間も好きなんだけどなあー。影響されやすい私は気にしちまいます。

2 件のコメント:

  1. すずさん

    うち福田繁雄知りませんでした!でも味がありますね^^
    なんかおすすめの人がいたら教えてください!

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